私は雑兵

社内ニートが自律神経と戦っています。

【うつ病】人生の休暇 「失われた夏と取り返した夏」

梅雨が来ない。

我が県では梅雨入りをしたという知らせは届いたものの、一向に雨が降らない。毎日、さんさんと太陽が照り付け、サングラスにビーサンを履きならしたナウでヤングなギャルが街を闊歩している。

夏だ。梅雨は消え失せてしまった。

 

そんな暑さにエアコンをかけ、家でゴロゴロしていた私と婚約者はふと思い立って冷たいものを食べに行こうとなった。近所のカフェがかき氷を始めたというので出向いてみる気になったのである。

日差しをよけながら汗だくで歩くこと十分ほど。カフェに到着した。エアコンのきいた店内でとろけながら、婚約者はクリームぜんざいを、私はキウイフルーツかき氷を頼んでみた。でてくる巨大なかき氷。嘘だろ、これで八百円なんて……と驚きながらも口にする。甘くて酸っぱい。目が覚めるような冷たさとありがたがりつつ、二人でそのまま冷気を体へと取り込んだ。

 

店内を出ると、あれだけ嫌だった熱気が温かく感じられる。たくさん食べた氷が体を相当冷やしていたようだ。真夏の日差しがうれしくて、そのまま二人で公園へと向かう。日陰のないブランコを漕ぎながら、いまごろ子供たちはエアコンのきいた部屋でゲームであろうかと想像を膨らませた。

 

人は若かりし頃に置き去りにしたことを、残りの人生を使って追い求めるのだという。私の場合、なんであろうかとふと思った。思えば、私は寄り道をしたりすることがなかったように思う。友人とアイスを食べて、公園でしゃべって時間をつぶし、暑さを満喫するなんて一度もしてこなかった。そうか。私が置き去りにした夏はここにあったのだ。想像と違っている点は、アイスを食べてブランコをこぐ相手がかわいい女の子ではなく、ガタイのいい男性だったし、私が女子高生ではない点であろう。

 

そんなことを、クーラーのきいた部屋に帰り、昼寝をしながら考えた。

失われた夏は、今、取り返したようである。