【うつ病】人生の休暇 「奴らはアホでも幸せそうだ」
うつ病とは関係なく、モルモットは生きている。
我々人間がいかに難しい問題に直面していようが、関係なさそうに「餌をよこせ」という顔で見上げてくるし、人間があわただしくしている中でもプースカ眠っている。
思えば、うちにいるモルモットが来たのは私のうつ病が原因だった。
当時、一人暮らしで前に飼っていたモルモットが死んだ。寿命だった。徹夜明けで帰ってきて、明け休中に眠っているときに安らかに息を引き取った。ゴワゴワとした体毛がもう触れないことに長い時間、涙した。
そのあと、私は遊び続けた。友人と遅くまで飲み歩き、秋葉原で散財した。ギャルゲに時間とお金を費やして「私はこのままオタクの人生を満喫するのだ」と本気で思っていたのである。
しかし、それでも家に帰ってなにも生命のいない状況はただ私の心を締め付けていく。気が付けば電車で一駅のところにあるペットショップへ駈け込んでいた。
モルモットは需要が少ない。飼っている人は少ないし、モルモットという生物を知っている人も少ないように思う。そのため扱っている店舗は少なく、土地勘も足もなかったために、私は小動物専門店で血統書付き(!)のモルモットを飼うことになったのだ。
いままでホームセンターでしか動物を買ったことがない田舎民には衝撃的な出来事である。
モルモットを買うとき、二匹同時に飼うと決めていた。ペットショップの小さな店舗の中で売れ残りが二匹いた。曰く、長毛種なのに毛が伸びないこと、人に慣れていないのが原因であるという。しかし、私にはそれでも二匹が魅力的に見えたのだ。
そうやってやってきた生命二匹は、すくすくと成長した。一匹はつい最近、天国に旅立ってしまったが、もう一匹は丸々と成長している。眠くて目が閉じそうになっていたり、あくびをしたり、だるさのあまりトローンと軟体動物状態になっていたり。思えば眠っている姿しか見ないが、目を閉じず警戒すること前提の睡眠を平常とする弱い生命が、安心して眠っている姿は私たち人間をも安心させてくれるようだ。
モルモットは決して賢くない。脳みそだってあんな小さな体に入っているのだから、きっと小さい。しかし、彼らは何に文句を言うでもなくただ生きている。その姿や息遣いが、私を安心させてくれているような気がしている。